実行委員長 中野 亮司
勤医協中央病院呼吸器センター
第43回全日本民医連呼吸器疾患研究会(民呼研)を,2018年10月12日(金),13日(土),札幌市において開催いたします。
全日本民医連呼吸器疾患研究会は,1976年に初めて開催され,その後毎年各県持ち回りで準備し継続されています。北海道では1979年,1992年,2005年に引き続き,4回目の開催となります。偶然ではありますが,ちょうど13年おきに開催しています。
民医連における呼吸器科は,肺炎などの急性期の診療,慢性閉塞性肺疾患や間質性肺疾患,肺がんといった慢性疾患だけではなく,大気汚染や粉塵よる気管支喘息,珪肺症をはじめとするじん肺症といった社会問題に関わる内容について,取り組んできました。科学の目をもって,病に苦しむ患者と向き合い,患者やその家族,コメディカルスタッフ,地域のひとびととともにケアをつくってきました。また,診療内容は幅広くかつ奥深く,総合的な能力が必要とされ,自ずと各施設での内科診療の中心を担い,また民医連の後継者の育成においても力を注いできました。
第43回全日本民医連呼吸器疾患研究会実行委員会のテーマは,「今,民医連に求められる呼吸器専門医療とは」といたしました。民医連における呼吸器専門医療のこれまでについて振り返り,実践の交流をし,質の向上を模索し,新たなかたちを考えるという意味を込めています。専門医療というと相当規模の急性期病院で,というイメージがあります。最新の設備や医療機器を用いて,高度な診療を行う.それは,確かに専門医療のひとつのかたちではあります。ただ,民医連で働く呼吸器科の医師の多くは,中小病院や診療所で診療をしています。単純X線とスパイロメトリだけで,専門医療を行っています。呼吸器疾患だけではなく,その合併症,あるいはその社会的背景を総合的に診ています。
今回のプログラムは,呼吸器科の標準診療のアップデートと,地域における呼吸器科診療の展開について,議論を行う内容といたしました。記念講演は,北海道大学大学院医医学研究科呼吸器内科学分野教授の西村正治先生をお招きいたします。先生は,17年の長きにわたり,教授としてご尽力され,今年退官されます。これまで,慢性閉塞性肺疾患だけではなく,呼吸器内科全体について本当に広く,深く研究され,診療と教育にあたられました。当日は慢性閉塞性肺疾患の診療についてお話しいただきますが,その翌日からの診療がまた新鮮に見えるような内容となるものとご期待しています。学習講演は,私たちが勤務する勤医協中央病院と同じ札幌市東区で,地域における緩和ケア診療に取り組んでいらっしゃる,こだま在宅内科緩和ケアクリニック院長の児玉佳之先生をお招きいたします。呼吸器疾患の緩和ケアを中心にお話をいただきますが,専門医療との連携や地域での連携についても深められる内容になるものと存じます。講演の他には,二つのシンポジウムを予定しています。ひとつは「呼吸器科診療における地域連携」をテーマに,急性期病院,地域のクリニック,在宅療養を支える医療・介護スタッフから報告をいただき,ディスカッションをいたします。もうひとつは,昨今の民医連の呼吸器科診療においては,必須の課題となっているアスベスト問題を取りあげます。医療だけではなく社会的な内容が多く関係するテーマです。医師,弁護士,労災に関わる施設内外のスタッフよりそれぞれ報告をいただき,実際の診療に当たられている民医連の諸先生からもご意見をいただきたいと考えています。例年通り参加される皆様にご発表いただく分科会も予定しています。多くの演題のご応募を期待いたします。
研究会の企画や準備を進めるにあたり,これまで42回も続けてこられたというプレッシャーを感じています。民呼研世話人の諸先生のご助言をいただきつつ,実行委員とともにより良い研究会となるよう,努力をいたします。
札幌の10月はとても良い季節です。やわらかな陽差しとさわやかな風が心地よく,朝にはもう肌寒く感じる中,木々は彩りをましていきます。北海道は遠方でありますが,ぜひ第43回全日本民医連呼吸器疾患研究会に足をお運びいただき,これからの民医連の呼吸器科診療がより良いものとなるよう,貴重なお言葉をいただきたく存じます。皆様のご参加を心よりお待ち申し上げます。